大町の気象条件を生かして

市内全域に豊富な農業用水が巡る大町市。北アルプスからの伏流水を含んだ豊富な水と日夜の気温差がある特有の気象条件は、栄養をたっぷり蓄えた、おいしい野菜を育みます。
標高700m、大町市南部の常盤地区にあるアルプス八幡農園(やはたのうえん)も、そんなおいしい野菜を消費者に届ける農家の一軒です。

記録的な猛暑と少雨の最中、八幡農園の畑を訪れました。農園に一歩足を踏み入れると、よその畑とはちょっと違う感じがしました。
同じ品種の野菜の畝は、比較的少なく、様々な野菜が少しずつ栽培されてます。そして、畝の合間には、自然に野草(雑草)が繁茂しているのです。

それもそのはず、八幡農園は、環境保全型の農業を目指そうと、農薬や化学肥料を使わない無農薬有機農法にチャレンジしている農園なのです。

すべては、安心・安全な野菜を作るために。

「雑草は頻繁には刈らず、作業するのに邪魔になったら刈る感じです」

そう教えてくれたのは、八幡農園の責任者、八幡大智(だいち)さん。

2010年に大町市に移住した八幡一家。「カラフル!ジョイフル!セーフティ!」をモットーに、家族5人で、体と健康にとって安全・安心な野菜、そしておいしいと心で感じてもらえる野菜作りに励んでいます。

人参など、雑草に弱い品種に対しては、徹底的に草取りをしますが、草に負けないものは、基本的に除草をしません。当然、除草剤(農薬)も使いません。
その代わり、虫が嫌がるハーブなどをうまく用いたり、ミツバチ、ミミズ、カエルなどが働きやすい環境を作り、できるだけ虫を殺さず、自然環境に負荷をかけない栽培方法を工夫しているそうです。

八幡農園で栽培されている野菜の品種は代表的な夏野菜のほか、黒ピーマンや丸オクラ、白ナス、紫花豆、四角豆、大野芋など、スーパーでは手に入りにくい珍しい品種も。

「自分たちでいろいろな種を植えてみて、食べておいしいと思ったら栽培します」

それぞれの収穫量は農家としては多くはないものの、収穫時期を少しずつずらしながら少量多品目の野菜をコンスタントに収穫・販売しています。

大阪から三重・沖縄、そして大町へ。

大智さんは、大阪府出身。中学卒業後は、三重県の愛農学園農業高校に入学し、実践を通して、農業や有機農法の基礎を学びました。
高校卒業後は沖縄の農業大学校へ進み、その後、研修センターで農業経験を積みました。

転機は2010年。父親の博己さんが定年退職し、リタイア後は大好きな山の近くで暮らしたいと、大町市への移住を検討していました。
時を同じくして、大智さんも新たな場所で農業に挑戦したいと思い立ち、一家で移住することになったそうです。

移住後も3年間は、大町の気候や野菜のことを知るために、八坂で研修しながら働きました。
そして、2013年。念願かなって、知り合いから約1ヘクタールの農地を借り受け、アルプス八幡農園をスタートしました。

多くを語らず、寡黙な職人気質という印象の大智さん。
「人気がある野菜は何ですか?」との問いには、
「人気のない野菜はないですね」と一言。

「“ピーマン嫌いの子供が、うちのピーマンを美味しいといって食べた“なんて嬉しい話を聞くと、励みになりますね。」

そう話す大智さんの表情に、笑みがこぼれました。

大地の恵みと、家族の愛情に育まれた野菜

営業と販売担当は、お父さん。Facebookなどでこまめに収穫状況を情報発信しながら、個人宅配や、地元のスーパー、有機農産物を専門に扱う宅配業者など複数の販路を展開し、確実にファンを増やしています。

ネズミがマルチの下に巣を作り、作物の根っこをかじって、スカスカにしてしまうことも、しばしば。けれど、そんなハプニングもさほど苦にしない大らかさと、自然と共生しながら野菜作りを楽しんでいる様子が伝わってきました。

大町の水と、太陽のパワー、そして、生産者の想いがこもった野菜たちを、ぜひ一度、味わってみてください。

INFORMATION

名 称 アルプス八幡農園
住 所 大町市常盤4875-29
電話番号 0261-85-0138
HP https://www.facebook.com/Alpusuyahatanouen/
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