水と共に暮らす
蛇口から湧き水が出てくる大町市
大町市の水道水は、主に3か所の水源から取水しています。
原水はすべて北アルプスの山々の自然のろ過のより湧き出た「湧水」です。上水道のおよそ90パーセントがこの3箇所を水源としており、水道法に基づく最低限の塩素滅菌が行われて各家庭に届けられます。
水源とは、文字通り「水の源(みなもと)」を表す言葉で、日常使っている生活用水を取水する元の場所です。
一般的には、地下水やダム、河川、湖や沼などであることが多く、湧き水を水源として用いる地域は全国的に稀と言えるでしょう。
特に大町は、北アルプスの麓、信濃川水系の最上流に位置しているので、水の生まれる場所がそのまま水源となって飲み水に利用される、稀少な地勢といえます。
豊富な水量を誇る3つの水源
一番古いものは居谷里水源で、大正13年から給水が開始されました。水源付近は美しい湿原に囲まれ、豊かな自然が残っています。1日約5,000㎥(25mプール17杯分)の湧水を取水し、市街地の東側を中心に給水を行っています。
市内の最も大きな水源は、爺ガ岳スキー場近くに位置する矢沢水源。ここでは1日約8,000㎥(25mプール27杯分)の湧水を取水します。大量の原水は扇状地の地形を生かし地下に埋設された配水管を伝い、平地区や常盤地区など約4,000世帯に運ばれています。
もうひとつは上白沢水源。北アルプスの山々や森に浸透した雪や雨が自然にろ過され、ここで地上に現れます。1日に湧き出る水の量は約4,000㎥(25mプール13杯分)。大町地区の本通りから西側、約2600世帯に水を届けています。
「おいしい水」ってどんな水?
本来の水(H2O)は無味無臭で、純水や蒸留水と呼ばれます。これらは、あらゆる物質を含まない水で口にしてもあまり美味しくありません。一般的に“おいしい水”とは、なにも不純物を含まない水のことではなく、味を感じるための鉱物がとけ込んでいるものを指します。
含まれる成分としては、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウムなどのミネラル成分で、含まれる量が多すぎると渋味や苦味を感じると言われ、適量なバランスが“おいしい水”とされています。また、1リットル当たりの含有量により硬度として数値化し、少ないものを軟水(硬度100未満)、多いものを硬水(硬度300以上)として分類しています。大町市の上水道は、硬度は20以下の超軟水とされており渋味や苦味のない非常にまろやかな味です。
世界で愛され、評価される大町の水
大町で湧き出る水は、旧厚生省(現厚生労働省)のおいしい水研究会が1985年(に定めた「おいしい水(水道水)」の基準を十分に満たす超軟水です。山々でろ過されたばかりの湧き水は、カルキ臭の原因になる物質も少なく、水道水として非常に質の高いものと考えられています。そのおいしさを裏付けるように、上白沢水源から湧き出た水をそのまま非加熱除菌してボトリングしたナチュラルミネラルウォーター「信濃大町湧水」は、モンドセレクションの「ビール、水、ソフトドリンク」部門で3年連続最高金賞を受賞しました。
蛇口をひねって何気なく口にしている水が、世界で認められた最高品質であること。家庭料理やお茶の味もぐっと引き立つといいます。水は、豊かな自然と先人たちが育んできた大町市の宝であり、なによりの贅沢です。
暮らしの豊かさを育む水
大町市の宝は、飲み水だけではありません。北アルプスの山々が生み出す豊富で清冽な水は、おいしい米や野菜、そば、果樹、ワインブドウなど農産物が育つ源となり、里山に実りをもたらします。そこから製造される日本酒、ワイン、コーヒー、和菓子などの食はもちろん、オーガニック化粧品や和紙の製造、仁科三湖を中心としたアクティブスポーツやレジャーなど多くの面で、水が私たちの暮らしと関係していることがわかります。
大町市の商店街を歩けばサラサラと水音が聞こえてきたり、山の中腹では新緑や紅葉、雄々しい山々を映し出す水面に目を奪われたり。ちょっとした日常風景の中で、大町らしい豊かな暮らしを支え、育くみ続けているのです。