緑の中にある工場から。
大町市常盤の高瀬川沿いに自社工場(長野本社)があるアルペンローゼ株式会社は、ヘアケア、スキンケア、ボディケア製品、エッセンシャルオイル等を製造販売する化粧品会社です。この会社の特徴は、美しいガーデンを併設しており、工場に緑がある、というより、緑の中に工場がある、と言えます。
その名も、「ラ・カスタ ナチュラル ヒーリング ガーデン」です。
受付を済ませて“植物の発芽”のゲートをくぐると、別世界のような、緑の空間が広がっています。樹木と草花に彩られた小径を歩いて行くと、やさしい花の香りが漂って来ました。
取材に訪れたのは9月上旬。ダリアやケイトウ、コスモス、リンドウなど秋を感じる花々を愛でながらしばらく歩いていくと、西洋のお城のような建物が現れました。そのお城のような建物の内部は、1階が化粧品製造工場、研究開発室、2階がショールームと体験工房、3・4階が展望塔となっています。
水の美しさが生み出すもの。
常務取締役の高橋浩史郎さんに、大町工場設立の背景と、ラ・カスタ ナチュラル ヒーリング ガーデンについてお話を伺いました。
「”良質な製品づくりのためには自然環境が大切”と考えていた創業者は、どうしても水の美しい北アルプスの麓に自社工場を建てたかったと聞いています。水は化粧品の命ともいえ、水の美しさが製品の質・クオリティを左右すると言っても過言ではないからです」
大町出身だった創業者の熱意と、関連会社(ラインハルト株式会社)が大町市にあったことも手伝って、計画は順調に進み、2004年にアルペンローゼ株式会社の庭園工場が誕生しました。工場で利用している水は、敷地内地下100mの水脈から湧き出す清水。必要最低限のろ過を施し、化粧品製造にはもちろん、ガーデンでの飲み水や池・せせらぎにも利用されています。
工場に併設されたラ・カスタ ナチュラル ヒーリング ガーデンの敷地は、11,000㎡(3,300坪)。四季に合わせて約1,000種類の植物が植栽されており、なかには普段目にしたことのない珍しい植物やハーブが咲き誇っています。
では、どうして自社工場にこんなにも本格的なガーデンを造ったのでしょうか?
“植物の生命力と癒し”を五感で。
そもそも、La CASTA(以下、ラ・カスタ)のブランディングの一端としてガーデンの構想があった、と高橋さんは教えてくれました。
「ラ・カスタ ナチュラル ヒーリング ガーデンは、ラ・カスタのコンセプトである“植物の生命力と癒し”を体感するガーデンです。“植物の生命力と癒し”を感じられるガーデンとはなんだろうと、社員が知恵を絞って考え、五感を全て満足させることができる“五感で感じるガーデン”という答えに至り、カナダやイギリス、フランスなど、主だったガーデンを視察しました。」
その後、日本の造園業者にデザインを依頼したところ、なかなか満足できるような内容のものは上がって来ず、“それなら、自分たちの手で作ろう!”と、研究に研究を重ね、試行錯誤しながらガーデンをデザインしたそうです。さらに、植栽する草花も、市販のものでは事足りず、自分たちで育てようということに。
ラ・カスタ ナチュラル ヒーリング ガーデンは、北アルプスの天然水が流れるウォーターガーデンを中心に、テーマごとに9つのガーデンから構成されています。
高橋さんが一番のおすすめと案内してくださったのは、“アロマガーデン”。ラ・カスタ の製品に使われているエッセンシャルオイルの香りが採れる植物が植栽されているガーデンです。
「ここへ来れば、ラ・カスタ に配合される植物原料がどんな形で、どんな色の花を咲かせ、どんな香りなのか、見て触って、感じることができるんです」
刈り揃えられた芝生の上には「ご自由にお入りください」の看板。芝生が踏まれるのを懸念するのではなく、芝生を踏む気持ち良さを足の裏で感じて欲しいというメッセージです。ガーデン内にはカフェもあり、エキナセアを練りこんだクッキーやハーブティーなど、“植物の癒し”を舌で味わうこともできます。
開園期間中(4月下旬~11月中旬)には常に花が咲いているようにと、花の開花時期に合わせ、季節ごとにデザインが変わるナチュラル ヒーリング ガーデン。
その美しさの源には、日々の徹底した手入れと、大町の清らかな水があります。
自社農園から。
ラ・カスタ ナチュラル ヒーリング ガーデンに植栽されている全ての草花を栽培している自社農園は、大町市平上原(たいら・わっぱら)にあります。敷地面積はなんと3,300坪。8名の従業員の手で年間500種類以上の花を栽培しているそうです。
この農園のもう一つの役割は、ラ・カスタのシンボルフラワーとして、ほとんど全ての製品に配合されているエキナセア(和名:ムラサキバレンギク)の栽培を行うこと。夏に赤紫色の花を咲かせるエキナセアは、北米原産の植物で、免疫力増進作用があり、ネイティブアメリカンがメディカルハーブとして使用していました。
「生命力が強いエキナセアは、大町の厳しい気候に適合しており、自社農園では農薬を使用せず環境に配慮した栽培に成功しました。現在、ラ・カスタ全品に使われているエキナセアエキスの原料は100%大町市産です」
高橋さんは誇らしげに教えてくれました。
自社農園では、製品に使う植物原料として、エキナセアの他にも、自給自足できるものがあるか、日夜研究中とのこと。
作り手の想いが込められたナチュラル化粧品とナチュラル ヒーリング ガーデン。その根底にある大町の水の豊かさを実感できる場所でした。
INFORMATION
名 称 | アルペンローゼ株式会社 |
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住 所 | 長野県大町市常盤 9729-2 |
電話番号 | 0261-21-1611 |
HP | http://www.alpenrose.co.jp/ |