コンセプトは「地球と遊ぶ」
「地球と遊ぶ」をコンセプトに活動を続けてきた木村さん。地球を物質とエネルギーとに分けて考えた時に、目に見えないエネルギーを知覚することが、地球の本質を理解する方法のひとつだと考えています。
「例えば熱のエネルギーは目に見えませんが、水が沸騰する、木が燃えるといった現象から知覚化することができますよね。こうした地球で起きている目に見えない自然現象を実際に体感することが地球の本質理解につながると思っています」。木村さんの考える「遊ぶ」とは、思考し、実験、観察、発見を楽しみながら繰り返すプロセスのこと。遊びの中には思考や工夫があり、遊びの中で得た経験は、単なる知識より生きたものになるのです。
地球で起こる自然現象を知覚化することで生活の中に大きな自然の原理やエネルギーが潜んでいることを個性的に表現する木村さん。「地球と遊ぶ」のコンセプトは、今回の作品である水をあそぶ「光の劇場」にもしっかりと根付いています。
水と人とが交わる「木崎湖」の魅力
木村さんはなぜ今回、作品の舞台に「木崎湖」を選んだのでしょうか。
「水をテーマに作品をつくるにあたって、いくつかあった候補の中から木崎湖を選びました。理由はたくさんありますが、いちばんは「人」ですね。木崎湖に愛を持って携わっている方、精力的に活動されている方、いろいろな方と関わって作品を作っていけると感じました。「木崎湖がいちばん綺麗に見える場所は?」と聞くと、みなさん“自分の家だ”と言うんですよ。地元愛のある方が多いですよね」。
「木崎湖はもちろん、驚いたのは信濃大町の「水」です。とにかく量が多く、かつ生活に密着しています。日本有数の名峰が連なる北アルプスから流れる雪解け水や、水の力を利用したダム……エネルギーとしての水に人がどう関わってきたのか興味を持ちました」。
水をあそぶ「光の劇場」に込められた想い
1階の壁はアイデアを書き込めるチョークボードでできています。絵や図を描いても良いし、未来の設計図をつくっても良いかもしれません。工房がコミュニティスペースとなり、お茶を飲みながらお話をしたり関われたりするハブにできたら、と期待を膨らませます。現在は感染防止のためにほとんど1人で制作を進めていますが、今後は地域内外の方々と一緒にものを作っていきたいと考えています。
2階に上がると、真っ黒な部屋の中に砂浜と流木が佇んでいます。流木のベンチに腰掛けると、黒い額縁の中に収められた絵画のような木崎湖が浮かんで見えました。鏡や窓越しにすると、光のあたり具合で色も印象も異なった風景が広がっています。波や魚のはねる音、水辺の空気感や匂いが心地よく、何をするでもなくいつまでも眺めていたい不思議な感覚に包まれました。
「私たちは普段、ものをじっくり鑑賞する時間に恵まれていないと感じます。地元の方でも何かに気づいたり、思い出したりする場所になってくれたら」と木村さん。作品には“観る、触る、聴く、香る、食す”といった五感で楽しむ仕掛けがたくさんあります。
流木や砂は高瀬ダムに流れ着いたものを使用。流木は雨の力で倒れ、水の力で流されて真っ白でツルツルとした現在の形になり、高瀬ダムに流れ着きます。まさに水のエネルギーを知覚化した姿です。静かで穏やかな木崎湖と、高瀬川の持つ激しい水のエネルギー、対照的な風景を同時に楽しむ狙いがあります。
北アルプス国際芸術祭へ
「水は命の源です。科学の視点では見えない力のようなものがあります。作品を通してそんなエネルギーを感じてもらえたら嬉しいです」。ご来場の際は、そんな水と人のエネルギーを感じながらご覧ください。
北アルプス国際芸術祭2020-2021のアート期間は10月2日(土)~11月21日(日)。市街地、ダム周辺、仁科三湖などさまざまな場所で展示されています。木村さんの作品は木崎湖西畔の空き家に展示中。アーティストたちの視点と芸術作品を通して、信濃大町の自然と文化を、五感でお楽しみください。
INFORMATION
名 称 | 水を遊ぶ「光の劇場」 |
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住 所 | 〒398-0001 長野県大町市平森10555−6 |
HP | https://shinano-omachi.jp/artwork/area_4#artist_26 |