ダムの役割
ダムを使用目的で大きく分けると2つあり、1つは大雨等による洪水の氾濫から人々の生命や財産を守る目的(「治水」という)と、水道や工場への用水、田畑へのかんがい用水や河川への環境用水、消雪用水等の供給や水力発電を行うなど目的(「利水」という)があります。普段あまり見ることのないダムですが、仕組みを知ればダムがもっと身近に感じられるかもしれません。
高瀬ダムと七倉ダム
高瀬渓谷を高瀬川沿いに上ると、大町ダムの奥に東京電力リニューアブルパワー株式会社の管理する2つの発電用ダムが見えてきます。ダムは2基とも、石を積み上げてつくるロックフィルダム。高瀬ダムの堤高は176mあり、ロックフィルダムとしては日本一の高さを誇ります。石は現地の花崗岩を使用し、積み方の美しさからダムマニアにも人気の高いダムです。
日本有数の豪雪地帯・北アルプスに源流を持つ急流河川である高瀬川は、大正期から水力発電に適した場所として注目されていました。大正11(1922)年には高瀬川第一発電所が完成し、第五発電所まで次々と建設されています。東京電力が高瀬ダムと七倉ダム、新高瀬川発電所の建設に着手したのは昭和44(1969)年。完成は10年後の昭和54(1979)年です。
建設から40年以上、日本有数の大規模ダムに関わる人々の数も少なくありません。そんな高瀬ダムや七倉ダムについて、東京電力リニューアブルパワー株式会社高瀬川事業所の青木康真さんにお話をうかがいました。大学院まで水の循環に関する研究をしていたという青木さん。水やインフラに関わる仕事がしたいと、入社を決意しました。
「水力という職業に誇りを持っています。先人たちのつくったものに感動しながら働く日々ですね。ダムの魅力はあの迫力にあると思いますが、造った人たちの試行錯誤が読み取れるのも面白いところ。例えば高瀬ダムは大きな電力を得るために前代未聞の大きさになりました。前例がないからこそ、場所や規模などを考慮した独特の工夫が必要だったと思います」。
水害の多かった高瀬川の欠点を水力発電に活かすことに成功しました。
あくまで発電を目的とする利水ダムですが、現在は大町ダムともより連携し、防災にも役立てています。
「歴史あるダムだからこそ、保守・管理を徹底して少しでも長く使っていきたいです。土木現場が後進的だといわれるIT技術も、若手として積極的に取り入れていければと思っています」と青木さん。現状維持だけでなく、より良いものを後世に残していきたいと気合を滲ませていました。
「大町に来て2年が経ちますが、周りの方々のあたたかさに助けられています。心にゆとりがあるというか。飲食店や観光スポットもたくさんあって、毎日が充実しています」。
人々の暮らしに寄り添う大町ダム
大町ダムは4つの役割を担う「多目的ダム」です。「1. 洪水から守る」「2. 水不足を減らす」「3.電気をつくる 」「4. 川の流れを保つ」。どれも私たちの生活に欠かせない、大切な役割です。国土交通省 大町ダム管理所長の長谷川賢市さんに、ダムの役割や管理に携わる想いなどをうかがいました。
大正時代から川に注ぐ水の力を活用した電源開発が盛んだった高瀬川。一方で水害も多く、昭和44(1969)年には1週間降り続いた雨の影響で下流に大きな被害をもたらしました。いわゆる“44災”の発生により、調査段階にあった大町ダムの建設は大きく加速することになります。
「大町市長から大町市の水防団組織を廃止したと伺いました」と長谷川さん。水防団とは、水害が起こった時に持ち回りで対処する消防団のような集団。今は消防団が水防団を兼務しますが、ダムにより“水害の起こりづらい川”が実現し、組織そのものが必要でなくなりました。
平成18(2006)年7月豪雨では、高瀬ダム・七倉ダム・大町ダムの3つが連携して下流の被害を和らげました。令和2(2020)年7月豪雨でも大町ダムや梓川の3ダムで合計1,380万㎥の洪水を貯留するなど、ダムが私たちの平和な暮らしを支えてくれていることを実感します。しかし「雨の降り方が変わってきたと、最近の災害を見て感じます」と長谷川さん。「悔しい気持ちもありますが、自分たちにできることに取り組んでいきたいです」。
「私たちの仕事はダムの管理だけでなく、道路や河川の整備、維持・管理などさまざま。社会資本整備を行いながら、人々の生活を便利で安全にすることが役割だと認識しています。大町ダムでは、流域の人々の安全や安心を守ることを第一に考え、働いています」。
大町に来て2年が経つという長谷川さんの楽しみは、朝の通勤時間。「晴れて澄み渡る青空に映える北アルプスの山なみは圧巻です。山が好きなので、晴れた日の朝は、今日も1日がんばれそうだな、なんて思えます」。
人々の暮らしに寄り添うダム
ダムというと少し遠い存在のように感じますが、実は私たちの暮らしと深く結びついています。ダムで働く人々からも、管理だけで終わらない、流域の人々や水に対する強くあたたかい想いが伝わってきました。水を飲む時、川を眺める時、電気をつける時、人々の暮らしに寄り添うダムのことを思い出してみてはいかがでしょうか。
INFORMATION
名 称 | 高瀬ダム |
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住 所 | 〒398-0001 長野県大町市平 |
HP | https://www.tepco.co.jp/rp/business/hydroelectric_power/mechanism/dam/list/takase.html |
名 称 | 七倉ダム |
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住 所 | 〒398-0001 長野県大町市平 |
HP | https://www.tepco.co.jp/rp/business/hydroelectric_power/mechanism/dam/list/nanakura.html |
名 称 | 大町ダム |
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住 所 | 〒398-0001 長野県大町市平高瀬入2112−71 |
HP | http://www.hrr.mlit.go.jp/omachi/ |